1日あたりで少ないときで10分、長いときで30分、静かに呼吸法に励んで、ちょうど2週間ほどしたあたりだった。
気功、仙道でいうところの「小周天」のようなものらしいが、当時は「小周天」などということばは知らなかったので、かなり驚いた記憶がある。
「小周天」というのは、気功法を続けているなかで辿る過程の一種だ。
特殊な呼吸法をしているなかで生じた、ヘソの下数センチあたりにある丹田で感じた熱のかたまりを、会陰部、尾てい骨、背骨と順々に通して、頭のてっぺんまで意識の力で持って行く。
さらに体の前面のダン中(胸の中心のツボ)、太陽神経叢のあたりと下がって、最期にもとの丹田まで返すということになる。
この2週間のうちに、我流の呼吸法のエクササイズをしていると、たしかに丹田のあたりに熱い気のかたまりのようなものを感じることができたが、それ以上でもそれ以下でもなかった。
変化が起きたのは突然で、夜中、薄暗い部屋のなかで呼吸法をしているときだった。
頭のてっぺん(「百会」のツボあたり)を針で突いたような痛みが瞬間走って、そのあとで体の奥底からマグマのような熱い気の流れが、その針の穴からほとばしりはじめた。
熱くてドロドロとした感じがあるので、火山のマグマという譬えは、かなり的確だと思う。
呼吸法をしている最中で目は閉じていたが、何が起きたのかわからず、怖くて目を開けることができなかった。
そのうちに針の穴はマグマのような気の圧力で、穴の周囲がぼろぼろと崩れはじめて、さらに勢い良く大量のマグマが噴出するようになる。
これも頭皮の一部が破れたとかいうチャチなものではなくて、体の外側に張り付いていた土塊のようなものがごっそりとはがれ落ちるような感覚、言い換えれば、火山の噴火口の周囲の地面が、噴出するマグマの勢いで、大きな塊として崩れ落ちるような感覚がした。
このマグマのような気はどんどん体の表面を伝って下に流れていき、頭全体が爆発したように感覚が薄れた、というか、マグマの熱で溶けてしまって、感覚が消えたような感じになった。
面白いのは、この熱いマグマのような気というのは、頭から足の先やふともものほうまで飛沫となって飛んでいくことがある。
その飛沫がかかった部分の皮膚には、マグマが皮膚にでもかかったときのように、やはり瞬間に「熱いっ!」という感覚があるのだ。
こうして丹田で発生した熱のかたまりの気は、いつのまにか尾てい骨から頭のてっぺんまで上がり、そのうち丹田に降りてきて、「小周天」が完成した。
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